バルックの名を出した瞬間男は驚き、口ごもる。


「今の暮らしに不満がある、だが余所者の力は借りたくない、そのくせにお前達は何もせずに文句ばっかりだ。
 何もしないならしないですっこんでろ、シマを荒らされるのが嫌なら掛かってこい、殺しはしないが時間を無駄にさせた事への相応の代償を払ってもらう」


 シャルティエを抜き突き付けた彼の眼は本気、それは集落の者達も気付いているのか狼狽えていた。

 そして彼等は苦々しい表情でその場を去り、粗末な出来の建物に入っていく。


「リオン……」

「馬鹿な男だなバルックは、こんな奴等さえ助けようとしていたのか」


 熱意は間違いなく本物だったという事だろう。だからこそ、この憤りを向けるべき矛先が分からない。

 だが今はそれよりもやるべき事があると彼は軽く咳き込みながら再びマスクをつけた。


「しかし此処の住人は随分とこの環境に耐性がある様だな……」


prev next

bkm

[back]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -