一瞬不穏な空気が流れたが、フィリアの笑顔と、すぐに納得したスタンのおかげでそれは取り払われる。
セシルは胸を撫で降ろしていた。
「すまないフィリア、キツイ言い方で……」
「いいえ、重大な任務を背負っているのですから仕方ありません。
セシルさんが、それをよくご存知なのでは……?」
「それは……うん、そうだね。
でもリオンにはコレ以上、敵を作ってほしくなくてさ……」
一人ずつ海竜に乗って行くのを見送り、セシルは苦笑混じりに呟く。
フィリアはその様子に、まるで何か大きな決断を迫られている様な、そんな印象を受けた。
「次はフィリアだよ、気をつけて」
「あ……はい」
殿を務めるセシルに促され、フィリアは緊張気味に海竜内部へ進む。
後に続くセシルの脳裏にあるのは、忌まわしき記憶。
「馬鹿馬鹿しい……」
今更何が、変われると。
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bkm
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