「そういうわけじゃあないけれど……。そんなに辛いなら、横になったらどうだい?」

「そんな……みっともない事、出来っ……」


 突然口元を押さえ背中を丸めたリオン。

 完全に船酔いしている。


「大丈夫かい?」


 ゆっくり背中を撫で問うと、彼は頷き顔を上げた。

 表情こそ何時ものモノだが、顔色から強がりだと分かる。


「せめて薬を飲んでおくれよ、ニンジンとピーマンの次に嫌いなのは分かるけどさ。さっき渡したの飲んでないよね?」

「…………」


 観念したリオンは、懐から薬の入ったケースを出す。

 それを見てセシルは深々と溜息を溢した。


「セシル……」

「何だい?」

「手、繋いでいいか?」

「……構わないよ」


 了承するとリオンは手を取り、遠慮がちに軽く握る。

 セシルも軽く握り返し、暫く二人は口を閉ざしたまま海を見つめていた。




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