訊いても仕方ないと分かっていても、彼は訊いた。


「僕は……彼女の為に何が出来るんだろう……」


 両親の為に出来るのは、この戦いに勝つ事。なら彼女の為にまこの戦いを自分達の勝利で終わらせればいい、それでいい。

 しかし己が納得していない。苦しみ続けた彼女を救いたいと、無意味に近い願望を抱いているのだ。

 俯く少年にマリアンは言った。


「“彼女の為に”では押し付けがましいから、“自分が彼女にしてあげたい事”と考えた方が良いかもしれないわ」

「して、あげたい事……」

「ええ……人の気持ちを真に知る事は出来ない……だから、先ず自分を中心に考えてごらんなさい。貴方は、彼女に何をしてあげたい?」

「…………」


 彼は答える。


「笑っていてほしかった……笑顔にしてあげたかった……彼女の苦しみを受け止めて、助けてあげたかった……」


 もうそれは叶わない。

 だから、


「彼女が好きだと言った空を、取り戻したい」


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bkm

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