研究所へ向かう為に準備をしている途中、シャルティエがマスターに声を掛けた。
《坊っちゃん、何だか逞しくなりましたね》
「何だ突然……」
《いえ、ふと昔の事を思い出して》
彼は笑っている。
《何ていうか、昔は凄く周りに眼を向けずに1人で頑張って……僕、結構心配してたんですよ?》
「そう言う割には、“坊っちゃんなら出来ます”とか焚き付けられていた様な気がしなくもないんだがな」
《いやァ、それは……坊っちゃんには心許せる味方がちゃんと居たから大丈夫かなって》
「…………」
剣である彼に出来る事と言えばマスターに声を掛ける事くらい。兵器としての存在以外ではどんなに無力なのかよく分かっているのだろう。
彼が味方は、きっと数ヶ月前までは非常に少なかった事だろう、それは少年も理解している。変化が訪れたのは、同じソーディアンマスターに出会った時か。
味方が増えて、一番大事なモノを失った。
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bkm
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