視線は僅かにリオンへと集まる。一番危惧すべきなのは先の敗戦で受けた彼の傷、という事なのだろう。
「僕は大丈夫だ、ルーティが随分と治癒晶術を掛けたらしいからな。少し痛みはあるが、傷はほぼ塞がっている」
「素直に助かったって言いなさいよ」
ルーティに肩を叩かれ小さく鋭い痛みに一瞬彼は顔をしかめた。だが彼女の言う事にも一理あると自覚はしていても、それを言葉にするのはなかなか難しい。
睨み合う姉弟に周りは笑う。それだけ余裕が生まれたという事だろう。
王は若者達に告げる。
「我々は全力でそなた達をサポートする、後ろは気にせず前を向いて進め」
「はいっ」
相変わらずスタンの返事は明るい、それがどれだけのモノに救いを与えてきたのだろうか。
準備をしようと城内へ戻ろうとした時、スタンは慌ただしい中で1人外郭を見上げているレイノルズに気が付いた。
「レイノルズさん、どうしたんですか?」
「うん? んー……僕なりに気合いを入れてるんだ」
「そう、なんですか」
「うん、ほら皆が待ってるから行きなよ」
言葉に押され、青年は軽く一礼した後城へ駆ける。
そして彼は再び、見上げた。
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