スタンが言った。
「それって、何か虚しいよな……家族も友達も居ないんだろ?」
《千年前は他の天上人は居たが……確かに、今は一人きりだな。だが奴の精神構造を我々が理解するのは不可能だろう》
「そうだな……だから、こんな酷い事を簡単に出来るんだよな……」
彼の表情には同情の感情は無い。あるのは哀れみと、隠しきれない激情。
そこから話題を変えたのはルーティだった。
「で、結局さ、セシルのソーディアンって誰なんでしょうね。まさか、ミクトランとか?」
《そうね……その可能性も無いと言えないわ。今だから正直に言うけれど、海底洞窟で対峙した彼女、ミクトランに何処か似ていたのよね……》
「そうだな、実物を見た今ならばその話も納得出来る」
ウッドロウは頷く。
赤い眼といい、口調といい、確かにミクトランに似ていたのだあの時の彼女は。
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bkm
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