ただ1人――スタンだけはディムロスの切っ先を床に向け、彼には珍しい感情の見えない眼で男を見た。

 その様子に仲間達は僅かながら戸惑いを覚え、奇妙な空気が流れ始めた時青年は静かに問い掛ける。


「お前……“誰”だ」


 仲間達はその言葉の意味が分からなかった。ヒューゴに向けられているのは分かるが、それは疑問ではなく確定の問い、より一層真意が分かりかねた。

 続く沈黙、それを破ったのは膝をつき顔を伏せる“ヒューゴ”の小さな笑い声。


「ククッ……なるほど……世間知らずのただのガキではないという事か……」


 彼は立ち上がる、何故か血は落ちない。上げた顔は今までになく悪意に満ち、マスター達は少なからず恐怖を覚えた。


「少し、お前達を見くびっていた様だな」


 ヒューゴの声に別の声が重なり聞こえる。ソーディアン達は声を震わせた。


《この声は……まさか、貴様!!》


 ヒューゴではない声が笑う。


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bkm

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