彼女は神殿で薬物研究をしていたらしい。だから過去の技術に大きな興味があるのだろう。
時折明らかに普通ではない色の液体が入った瓶が、彼女のマントの下から見えるが恐らくは気のせい。
「そういえば、リオンさんの姿がありませんね……」
「彼は群れるのが好きじゃないからね……、何処かで油を売ってるんじゃないかな」
困ったものだよ、と溜息をつきながらセシルは笑う。
リオンは、自分の部屋の机に突っ伏していた。
《坊っちゃん……大丈夫、ですか?》
「大丈夫じゃなかったら、後が困る」
《…………》
自分のマスターは精神的に脆い部分があると、シャルティエは分かっている。
分かっているが、そんなマスターの全てを支え切れる程自分は“人間”が出来ていないとも痛感していた。
そこに響く控え目のノック音。
『リオン様、お飲み物をお持ちしました』
「――! ……入ってくれ」
『失礼致します』
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bkm
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