たった1つだけの真実は、少年の心を揺れ動かす。
『彼女の実力を考えれば、皆様の始末は問題無く可能な筈……しかし彼女はそうしなかった。コレがどういう事なのかは、きっと皆様がご存知でしょう。
ですが彼女の死、皆様の存在、それでも彼は止まる事を知らず、今に至るわけです。施設の防衛と彼は私達に命じましたが、恐らくベルクラントの時間稼ぎでしょう』
つまり彼等は捨て駒も同然。バルックは己の信念で、イレーヌは己を見失い、あの場所に居た。
ならば彼は、
「親のエゴにも、限度があるだろう……」
『それが親というものですぞ、坊っちゃん。クリス様も、かつてのヒューゴ様もそうであった様に』
彼は笑い、そして彼等に言った。
『私は未だに、どうしても彼がこの様な事をするとは思えんのです……故に此処から先には、更にご姉弟にとって辛い現実が待ち受けておりましょう。ですがどうか、前を向いてくださりませ。他の皆様もどうか、お2人の力になってくださいますよう、お願い申しあげます。
……それでは、私めはこれにて娘に会いに暇を頂きましょう。皆様、ご武運を』
prev next
bkm
[back]