まだ空気が震える中、イレーヌは変わらない立ち位置で座り込んでいた。身体が動かないのか、放心状態なのかは分からないが、障壁は消滅しており、マスター達の勝利と見て間違いないだろう。
「イレーヌさん……!」
駆け寄るスタンだったが、すぐに妨害する様にして氷柱が生えた。
まだ戦意があるのかと皆は身構えるが、立ち上がったイレーヌの眼にその力は無い。
「負けちゃった……私がやる事、全部、中途半端だね……」
少しずつ彼等と距離を取る様にして後ろに彼女は下がっていく。それをスタン等は追おうとするが、再び――しかも範囲を広く、幾重も――障壁が張られ、彼等を阻む。
「君達の言う通りだよね……結局ね、私も私が一番大事なの……そんな女が、人々を纏められるわけないよね……」
「違います! イレーヌさんが皆を救おうとする志しを、知っている人は沢山居ます!」
「そうかな……? フフッ、君が言うなら本当なのかもね……」
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bkm
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