狼狽えながら首を横に振る娘を見て父は笑う。
その直後、屋敷の方から彼を呼ぶ声がした。
「そろそろ戻らんとな。イレーヌ、たまには手紙でも寄越しておくれよ」
「分かってるわよ」
「なら良いのだがのう」
失笑と共にレンブラントは屋敷へと戻って行く。その背中を見送るイレーヌは深く溜息を吐いた。
「お父さんったら、私はもう子供じゃないのに」
「親にとって子供は何時までも子供……っていうのはよく聞くけどね」
「……親子という関係は絶対に切れないモノだ、当たり前だろう」
「リオン君は相変わらず現実的ね、私より大人っぽいんじゃないかな」
紅茶を飲むイレーヌは微笑み、そして呟く。
「家族という間柄じゃなくても……ノイシュタットの皆が、美味しい紅茶を飲んで、笑って……皆同じ人間なんだから、きっと出来るわよね」
夢物語にはしたくないと彼女が言うと、彼女は“きっと大丈夫”と言った。
彼は、頷く事しか出来ずにいた。
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bkm
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