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 だが、と彼は言う。


「彼女は……、天使でもなければ、悪魔でもない……ましてや神でもない……。あんなに、心を感じられない人間は、初めてだった……」

「…………」


 心を感じられない、それはヒューゴ以上と彼は言うのか。リオンには到底信じられなかったが、何が真実かも分からない以上それを否定出来る理由は無い。

 ただ、“彼女”だけは信じたかった。


「彼女が何を考えて君を此方に寄越さなかったのか……天と地、我々と君達……どちらの為の判断だったのか……まだ分からないな……私には、それを知る権利も余裕も無いわけだが……」


 突然、彼の手に大きくヒビが入る。“普通”では有り得ない事情ではないが彼自身もう普通ではないのだ、納得せざるを得ない。

 それでも彼は、自分の手を見て笑っている。


「やれやれ……人間を止めた男には相応しい末路か……」

「バルック……」

「知り合いに看取られるだけ、私はまだ幸せなのかもしれない」


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bkm

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