ウッドロウが僅かに後ろへ下がり詠唱を始める。威力を底上げ、そしてイクティノスが破損している事もあり詠唱時間は長い。
気付いたバルックが阻止しようとするがスタンが盾に止めた。ソーディアンと虫の様な腕にある片方ブレードが噛み合い力の勝負になる。
「バルックさん……! どうして、この道なんですか……!」
「そうだな……歳を、取り過ぎたのかもな」
空いた方のブレードがスタンを狙い、青年は僅かに髪を切られながら距離を取った。
「悪魔の囁きは、私にとっては正に天の囁きだったのだよ。劇薬入りの瓶を渡されたとしても、天に焦がれる私は飲み干すしか選択肢はなかった」
一度腰を落としたバルックは、ウッドロウに向かい突進する。スタンはディムロスの刃と柄に手を掛け、重い一撃を受け止めた。
「くっ……う……!」
身体中に衝撃が走り、一瞬視界が揺れる。しかしそれでも、目の前の“男”しっかりと見た。
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bkm
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