彼女は笑っていない、笑った様に見えるだけ。
重い沈黙が流れる。
「……ゴメン、なんかテンション上がっちゃってさ、ちょっと頭冷やしてくるわ」
苦笑し彼女は去って行く。
直後にリオンも別の扉から部屋を出た。
「余計な事を……」
《坊っちゃん、大丈夫ですか……?》
「さあな……」
誰も居ない、機械しかない廊下を当ても無く歩き続ける。
やるべき事は変わらない、なら自分は何をしているのだろうか。
「……兄弟は他人の始まりと言うが、僕とあの女は最初から他人だ。あの女には家族が居る……僕も、客員剣士としての立場がある」
《でも……セシルが言ってましたよね、母親であるクリス様はルーティを助ける為に手放したと》
「そして僕を産んだ後に死んだ……母さんはルーティを愛していたんだろう、じゃあ僕はどうだったんだろうな。ヒューゴの異常さに気づきながらも僕を身籠り、産んで……母さんは何を思って死んでいったんだろうな」
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bkm
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