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 リトラーの話にフィリアが疑問を口にした。


「という事は……あのベルクラントは、そもそも攻撃用の兵器ではないという事ですか……?」

《その通りだ。強大なエネルギーを持つ神の眼を核としているとはいえ地上を削るという大それた計画だ。故にベルクラントの威力は小規模なモノだったのだが……ある事をキッカケに、天上への希望は地上への絶望に変わった》


 希望が絶望に変わる。そんな悪夢の様な現実を千年前の勝利者は語る。


《ダイクロフトやその他施設の稼働の為に命懸けで天上に上がった科学者や労働者の活躍により、外郭計画は形になろうとしていた。そして計画をより完全なモノとする為に一部の民がテストという名目で天上に移住したのだが……此処で人々に精神的な問題が起きた。その一部の民というのは権力を持った富裕層等の特権階級の人間と、彼等の安全を死守する軍人だった。地上に生きる民からすれば彼等は正に選ばれた者達であり、早く自分もあの場所にという意識が高まり過酷な地上で生きてきたストレスが爆発しそうになっていた。そして天上に上がった者達も自分は選ばれた者だと自負し、次第に地上を見下す様な風潮に変わっていった。
 しかし外郭計画の最終目標は全人類を天上に移住させる事。精神的に追い詰められた故の苛立ちも、精神的にゆとりが出来た故の優越感も、世の倫理という“常識”と下で皆胸の内に留めていた。……あの男が現れるまではな》


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bkm

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