「セシル! セシル!!」
皆が呼ぶ名前にも答えられない程に身体は衰弱していたが、最後の力を振り絞り顔を上げて叫んだ。
「ラディスロウへ行け! 手遅れになる前に、彼を……アイツを止めるんだ、エミリオ!!」
「そんな、の……駄目だ……!! セシル!!」
崩落と濁流の音が聞こえる。
しかし彼女は笑った。首には、指輪が通されたネックレスがある。
「……セシル!!」
何度叫んでも現実は変わらず、エレベーターは地上へと向かう。
それを見送った彼女は水が溜まり始めたその場に倒れ、指輪を握り締めた。
「結局……返せなかったな……」
答えは最初から此処にあった。気付かなかった己はなんて愚かなのか。
「……ありがとうも、言えなかった……」
後悔と、彼等という希望が涙を流す。
水が、そこまで来ている。
「……もう一度だけ」
貴方と空が見たかった。
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bkm
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