「セシル!」
重苦しい空気の中で手を伸ばし、確かにその身体に触れた。
逃げようとする腕を掴み強引に引き寄せ、その瞬間具現した黒槍が2人を狙う。
「リオン!! セシル!!」
晶力の暴走による術光の中心に居る2人。最悪の展開を皆は無意識に心の中で考えていた。
光が収まったそこに、2人は倒れている。
「……くっ」
リオンが眼を開ける、腕の中には眼を閉じた彼女が居る。
荒い呼吸を続ける冷たい身体を抱き上げ、少年は再び名前を呼んだ。
「セシル……」
眼は開き、赤ではない普段の色を見せる。涙は流れたまま、力の無い瞳を向けた。
「エミ、リオ……? 何、で……?」
直撃はしなかったものの、余波は受けたのか彼の腕から血が流れている。
近づかなければ負傷することがなかった事を、彼は分かっている筈。なのに何故と、彼女は理解出来ないでいた。
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bkm
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