10

「なあ……? エミリオ・カトレット」

「……え?」


 ルーティ・カトレットが小さな声を上げる。

 姓が被る事は珍しくない。しかし彼女は薄く笑い、少年は青ざめている。

 女は更に言った。


「生き別れの姉との旅は、どんな気分だったのだろうな? 私はとても興味がある」

「止めろ……」

「血の繋がった家族を憎む男と、血の繋がらない家族を愛する女……どちらが幸せなのだろうな」

「止めろ!!」


 素の感情を露にし少年は叫ぶ。

 そして震える声でルーティが問う。


「何、言ってんのよアンタ……冗談も、大概にしなさいよ……」

「こんな冗談、私は言わないのだがね。そもそも、お前の存在が最初の計画外だったのだからな」

「は……?」


 ワケが分からないと彼女の表情が語る。

 重苦しいプレッシャーを放つ女は、1つ溜息を吐いた。


「まさか夫に危機感を感じ秘密裏に保管していたソーディアンと共に何処へ逃がすとは、クリス・カトレットも余計な事をしてくれた」


prev next

bkm

[back]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -