「なあ……? エミリオ・カトレット」
「……え?」
ルーティ・カトレットが小さな声を上げる。
姓が被る事は珍しくない。しかし彼女は薄く笑い、少年は青ざめている。
女は更に言った。
「生き別れの姉との旅は、どんな気分だったのだろうな? 私はとても興味がある」
「止めろ……」
「血の繋がった家族を憎む男と、血の繋がらない家族を愛する女……どちらが幸せなのだろうな」
「止めろ!!」
素の感情を露にし少年は叫ぶ。
そして震える声でルーティが問う。
「何、言ってんのよアンタ……冗談も、大概にしなさいよ……」
「こんな冗談、私は言わないのだがね。そもそも、お前の存在が最初の計画外だったのだからな」
「は……?」
ワケが分からないと彼女の表情が語る。
重苦しいプレッシャーを放つ女は、1つ溜息を吐いた。
「まさか夫に危機感を感じ秘密裏に保管していたソーディアンと共に何処へ逃がすとは、クリス・カトレットも余計な事をしてくれた」
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bkm
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