次第に漂う紅茶の香りが特別なモノの様に感じた。しかし何だか女々しいと、小さく溜息を吐く。
テーブルに物が置かれる音がし、漸く窓から視線を外した。
「どうぞ、マリアンには敵わないだろうけどね」
彼女は失笑しているがテーブルに置かれた2人分の匂いも色も良く、手際の良さが窺い知れる。
リオンが椅子に座った後にセシルが腰を降ろした。
「じゃあ……いただきます」
「どうぞ」
不意に向けられた笑顔からつい眼を逸らし、カップに口を付ける。
やはり味も良く、その熱が冷えた身体に染み渡る。
「ん、美味いな……マリアンのと同じくらい」
「そう? ありがとう」
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
だが口元に置いている指の隙間から、少年は不気味な弧を見た。
「セシル……?」
「なぁに?」
「……いや、……!?」
視界がぐらつき、身体が己を支える力を無くす。
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bkm
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