街を歩いても良いが、生憎用も無くただ歩くのはあまり好きではない為味は真っ直ぐ屋敷に向かう。
明日の事を考えると落ち着かないのは、漸く自覚してきた。
《何だか、足取りが軽いですね》
「うるさい……」
指摘されると更に落ち着かなくなってしまう。
だが落ち着いていないの彼だけではなかった。
「……何だ……？」
到着した屋敷の中が何処と無く騒がしい。
気になりながら自室に行き着替えを済ませると、理由を訊くため彼女を捜した。
「……マリアンっ」
「あ……エミリオ、帰っていたのね」
廊下で財布を片手に考え込んでいたマリアンは、彼に呼ばれ顔を上げる。
その表情は何時もの笑顔ではあるのだが。
「なあ、一体どうしたんだ？ 随分慌ただしいが……」
「ええ……ヒューゴ様が突然、使用人全員に休暇を言い渡したの。何でも各支社を見て回るとかで……皆慌てちゃってるのよ」
prev next
bkm
[back]