憎まれ口を叩く少年の代わりにセシルが礼の言葉を口にする。
するとスタンが彼女に笑顔を返し、一度息を吐いた後リオンに自分の手を差し出した。
「……何だ、この手は」
「握手、なんだけど……俺ってやっぱり、リオンとは同等にはなれないか?」
「…………」
静かにリオンは差し出された手を見つめ、言葉を返す。
「お前は囚人から一般人に戻っただけ、客員剣士である僕とは立場は丸っきり違うだろう」
「うん……」
「……まあ、その剣の腕は認めてやってもいい。田舎者にしては、という体でだがな」
ぶっきらぼうに言い、引かれる寸前だった手を握った。決して弱くはない力で。
スタンは一瞬驚いていたが、すぐにすっかり慣れ親しんだその笑顔を見せる。
「ありがとな」
「フン、調子に乗るな……お前は田舎で羊を追い掛けていた方がお似合いだ」
それを言う少年は、確かに目の前の青年を見ていた。
セシルはその姿に微笑を浮かべる。
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bkm
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