「おい、ルーティ・カトレットを見なかったか?」
「はっ……つい先程急ぎ足で港の方へ行くのを見ました」
「そうか……」
皆の下に戻り聞いた事を伝えると、スタンが断りを入れすぐに走り出す。
呼びに来た兵士が困惑していると、セシルが苦笑しながら彼に頼んだ。
「すまないけれど少し待ってもらえるかい? 陛下達には私が理由を話すから」
「……はっ」
空は少しずつ夜に染まる。
「君はいいのかい?」
「何がだ」
「言わないと分からないわけではないだろう?」
「…………」
風が冷たい。
少年は一つ息を吐いた後に答えた。
「アイツにはアイツの家族が居る。それは、僕には関係の無い事だ」
「……そっか」
セシルはそれ以上何も言わず、シャルティエも口を閉ざし続ける。
どちらが幸せだろうか、少年の脳裏にはそんな疑問が過った。
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bkm
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