「しかし、あの竜をどうにかしない事には……」
瓦礫の落下は済んだが、始祖竜の全ての行動は此方に大きな被害をもたらさんとする。グレバムは神の眼の傍で勝ち誇った笑みを見せた。
その手の中にあるイクティノス、ウッドロウは僅かに内に秘めた感情を露にする。
「ディムロス! 何とかならないのか!?」
《……この状況下では……グレバムを止める以外には――》
《ぬう……、下手に動くと狙い打ちされるからのう……》
スタンの叫びにディムロスに続きクレメンテが答えを濁す。
だが仕方ない事だ。相手は神の眼だけではなく空中能を可能にする始祖竜を操り、その気になってしまえば此方の足場を崩す事だって出来る。
逆に言えばそれをすぐに実行しないのは、此方を痛ぶる事を楽しんでいるグレバムの意図が見え隠れしている。
「…………」
ただ一人、何とか出来る者は居た。しかしその人は敢えて何もせず、状況に身を委ねている。
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bkm
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