「覚悟は出来ているな」
「……、ああ」
場に重く鋭い緊張が走る。数十秒か、数十分か、その感覚さえも忘れてしまう程に沈黙は続いた。
それを切り裂き、ウッドロウは告げる。
「――まずは、その怪我を治してからだ」
「……え?」
その怪我というのは、ダリスがウッドロウから受けたダメージで間違いない。
だが治してから、という言葉の意味をダリスは理解出来ないでいた。
「君も国を想う人間だ。そんな人間を、無下に死なすわけにはいかない」
「それは、だが……!」
「君を死なせない、それが私からの罰だ」
「…………」
王となる男は笑顔だ。
罰を与えるべき相手に救いを与えてどうするのかと、彼は叫びたかった。
「徹底的に話し合おうではないか、父とは違ったやり方で。相手が、未熟な私で申し訳なくはあるがな」
「ウッドロウ……」
prev next
bkm
[back]