その姿と言葉で、今のこの城の状態の理由が分かった。
彼は、義勇軍を纏め上げる責任を背負っているのだ。
「なるほど……此処まで来る間誰の姿も見なかったのは、君がそう彼等に命じたからなんだな」
「…………」
恐らく他の者達は玉座の間辺りに居るのだろう。だから彼は、各要所に続くこの大広間に居たのだろう。
ウッドロウがこの城に戻って来ると確信して。
「君が犠牲になる代わりに、彼等の免罪を……という事か」
マリーは何も言わなかった。いや、言えなかったのかもしれない。
此処で自分が懇願すれば、仲間や自分を想う夫の覚悟を否定する事になる。だがやっと会えた家族を失う決断を降せるのかと言ったら、真っ向からそれを否定するだろう。
だから彼女は泣いているのだ。
「……立て、ダリス・ヴィンセント」
「…………」
ウッドロウに促され、ダリスはマリーの手を借りず立ち上がる。
その眼は覚悟を決めていた。
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bkm
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