それはセインガルドに仕えている者として当然の判断。他国で動く以上、優位に立つ為の交渉カードを出し惜しみするわけにはいかない。
ただ本来ならば、16歳の少年にさせる決断ではないだろう。
「マリー、大丈夫?」
「ああ……」
やはり町人の視線はマリーに集まり、時折喜びながら話し掛けてくる人も居た。彼女はそれほどに、この町では有名人だったのだろうか。
まるで何かに引かれる様に歩くマリーと共に暫く行くと、目的地であろう家の前に着いた。
「此処がマリーの家……」
「……」
玄関は開いており、彼女はゆっくりと中へと進む。
主が居なかった筈の家は誰かが掃除していたのか綺麗なのだが、何故か今も生活感があった。
「ルーティさん、コレは……」
「コレって……」
戸棚には同じ食器が二つずつ。一つはマリーの物だとして、もう一つは今も此処に住んでいる人の者だろうか。
だとしたら、彼女は誰かと一緒に住んでいたという考えを肯定出来る。
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bkm
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