停泊している黒十字艦隊の甲板で、リオンは港の様子を見ていた。
フェイトの勝利に喜ぶ民達により活気に溢れ、それがティベリウスを更に哀れに思わせる。
「ティベリウスという男は、生まれる時代を間違えたのかもしれないな……」
《少なくとも今のこの国は戦争を望んでいませんからね……良い事ですよ》
シャルティエの言葉には珍しく説得力がある。戦争という行為に、彼なりに思う所があるのだろう。
《坊っちゃん、ありがとうございます》
「何だ、突然……」
《僕を、彼に託してくれた事ですよ》
「べつに、お前の為とかそんなんじゃない。奴には勝ってもらわなければ、僕が困るから……」
だからこの国の特別である剣を託し、勝利を約束させた。
そう彼は言うが、シャルティエにはお見通しだった。
《相変わらず、素直じゃないんだから》
「何か言ったか」
《いえ、何も》
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bkm
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