声の感じから察するに、あまり良い思い出ではないのかもしれない。
そんな彼女にシャルティエは問う。
《セシル、休まなくて大丈夫なの?》
「んー……」
彼の質問の意味は分かっている。
だから彼女は、間を空けてゆっくりと答えた。
「傍に居たいんだよね……、じっとしてるのは苦痛だし」
《坊っちゃんを信用してないわけじゃないんだよね?》
「当然だよ。じゃなかったら、一緒に居ないって……」
一緒に居るのはそう命令されたから、それだけの筈。なのに、胸に小さな痛みが走る。
《あのさ……セシルは、坊っちゃんの事好き?》
「好き……?」
好き、とは一体何だろうか。物については何となく理解出来るが、人間が対象となると話は別になる筈。
誰かが好き、とはどんな感情なのだろうか。
《セシル?》
「あ……うーん……あんまり考えた事無かったな……」
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bkm
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