「病み上がりが前に出るな!」
「す、すまない……」
「まったく……船医に診てもらって来い、今すぐに」
「ん……分かった」
反抗する理由も無く、セシルは指示に従い船医を訪ねた。
一通り診てもらった結果異常は無いと診断され、落ち着きを取り戻した船内を暫く歩いた後、曇り空の下の甲板に出る。
「――もういいっ、この話は止めだ!」
聞き慣れた少年の声。珍しく感情を剥き出しにした怒声。
セシルは駆け寄り、声を掛けた。
「どうしたんだい?」
「何でも無い。それより、体調はどうなんだ」
「大丈夫、心配掛けてすまない」
そう言って微笑み掛けるが、リオンの表情は酷く固い。
大きな波が散った後、彼は言った。
「トウケイに着いたら、お前は船で待機していてくれ」
「え……、どうし、て?」
殴られた様な衝撃が、胸に響く。普段通りならば、こんな事は起きはしない。
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