「お前はやはり素晴らしい」


 彼はそう言って、彼女の頬に手を添えた。


「お前という存在は、神からの祝福なのだろうな」


 不適に笑い、眼を見つめる。


「お前を自由にして良いのは私だけ……そうだろう?」


 彼女は問いに答えない。


「さあ、その力を私だけの為に奮ってくれ。そうすれば、我々の楽園は完成するのだ」


 漸く彼女が頷くと、彼は慈しむ様に抱き締める。


「空は……、天は……、私のモノだ――」


 成すべき事は、最初から見えている。

 とても簡単な事だ。


「……!?」


 眼を覚まし起き上がったセシルが、此処が船室だと気付いたのは大きく部屋が揺れた時だった。


「黒十字、艦隊……?」


 一番新しい記憶からどれくらい経ったのだろう。確かめようと立ち上がった時、上の方から人ではない気配を感じた。

 傍に置いてある剣を手にし、彼女は甲板に向かう。


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bkm

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