笑顔で彼女は頼むが、セシルはリオンのネックレスを返してしまった。誤解を生む前にその訳を伝える。
「きっと彼は一度戻って来るよ、その時に渡してあげて、マリアンから渡された方が喜ぶと思うんだ」
「あらあら」
彼女は微笑み頷いた。それに対しセシルも頷く。
そして笑顔で告げた。
「ありがとうマリアン、大切にするよ」
「ええ、そうしてくれたら嬉しいわ」
何時だったか、メイドの誰かが“マリアンはお母さんみたい”と言った事があった。
それよりも更に前にリオンは、彼女は自分の母親に似ている気がすると言っていた。
故人である、クリス・カトレットに。
「じゃあそろそろ行くよ、余裕があったらお土産買って来るね」
「セシルったら……気をつけて、行ってらっしゃい」
「ああ……行ってきます」
踵を返し今度こそセシルは広間を後にした。受け取ったネックレスを、大切に握り締めながら。
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bkm
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