夜、一行を乗せた商船はスピードを落としアクアヴェイルの領海の境界線を進む。
「見張りの船は居ないか……モリュウ、トウケイとは大違いだな……」
先刻モリュウ領とトウケイ領の領海近くを通ったが、余所者を寄せ付けまいと海軍が見張りをしていた。
しかし此処シデン領に、海軍の姿が全く無い。
「何か匂うねー、ティアラの発信器バレたかな」
「向こうが、此方を招き入れていると?」
「かもね、バティスタから私達が無事だって事聞いてるだろうし。
リオン、発信器の反応消えてない?」
フィリアの問いに答えた後、セシルはリオンが頷いたのを見て小さく溜息をつく。
「何故、シデンなのでしょうか」
「何か仕掛けてるって考えるのが自然だろうけど……、アクアヴェイルについては詳しくないから、何とも言えないかな……」
「だが罠だろうと、道があるなら今はそこを進むしかないだろう。
ボートを降ろしてくれ、此処からは僕達だけでいい」
リオンの指示に従い、船を進めたまま船員達は準備を始めた。
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