イレーヌの屋敷の一室から、男のくぐもった声が聞こえる。
声の主はバティスタ・ディエゴ。リオンにより彼は、マリーのティアラを装着され電撃による尋問を受けていた。
「……躊躇って無いのかしらね、アイツ」
「ルーティ?」
部屋の前で尋問の経過を窺っていたルーティは、ふと呟く。
「子供は、子供でいられる事が一番幸せなのよ。家族と一緒に暮らして、笑って、泣いて、怒られて、また笑って……。普通が、一番幸せだとアタシは思うわ」
「彼は、そうではないと?」
「さあね、他人の家庭なんて興味無いもの」
アトワイトを収めた鞘を握り締め、彼女は深く溜息をついた。
セシルは、ネックレスに指を掛け苦笑する。
「彼の母親は、彼が物心つく前に病で亡くなったらしくてね。その上父親がああいう人だから、ああなるのも無理無いと思わない?」
「……アイツなりに苦労してんのね」
「まったくだよ」
“知る”彼女は笑う。
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bkm
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