「皆! 落ち着いて、闘技場へ!」
騒ぎの中に響く凛とした声に、二人は聞き覚えがあった。
モンスターを薙ぎ倒し、声の主を視界に入れる。
「邪魔よ! 貧乏人のクセにノロノロと――」
「こんな時に身分の差なんて関係ないわ、見苦しいマネは止めなさい」
「イ、イレーヌ様……」
イレーヌと呼ばれた女性の目力に、貴族の女は何も言えずに走り去った。
女にぶつかられた少女をイレーヌは立ち上がらせ無事を確認すると、闘技場へと向かわせる。
「イレーヌ!」
「リオン君!? セシルも! 良かった……」
二人が腕の立つ剣士だと知っている彼女は、安堵の笑みを見せた。
そんな彼女の後方から、スタン等がやって来た。その中に、筋骨隆々過ぎるチャンピオンベルトを着けた半裸の男が居る。
「リオン! コレって……!」
「ああ、恐らく――」
街のモンスター達は粗方片付いてきている。
体勢を立て直そうとリオンがその名前を口にしようとした時、今度は闘技場の方から悲鳴が上がった。
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bkm
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