《惜しかったですねぇ》
「うるさい……!」
溜息をつくシャルティエを叱咤し、彼はセシルを見る。
彼女は眼を泳がせており、珍しく落ち着きが無い。
無理も無いが。
「セシル……ゴメン、急に……」
「いや、ビックリしただけだから……うん」
気まずい静寂が降りた。
先に口を開いたのは、セシル。
「あ、あのさ……彼等は、君にとって、大切かい……?」
“彼等”というのが何を指しているかは、リオンは分かっている。
だから俯いた。
「分からない……。分かった事と言えば、アイツは誰かを助ける事を全く躊躇しない馬鹿だという事……。そして僕は、無力だという事」
「リオン……」
「独断専行で、見下していた奴に助けられて、セシルに無理させて……これじゃあ、意味が無いどころの話じゃない……最低だ」
焦りが招いた結果。
彼はそれを、痛い程理解した。
prev next
bkm
[back]