『セシル』
夢の中だと理解出来る。
『セシル、どうした?』
自分を呼ぶこの声は、もう聞く事は無いのだから。
『お前は――』
奪ったのは。
「――。――セシル!」
「…………!?」
眼を開けると、目の前にルーティの顔があった。
セシルは起き上がろうとしたが、胸に鋭い痛みが走り踞る。
「ぐっ……! あ……」
「ちょっと……!?」
胸を押さえ呼吸を乱す彼女を見て、ルーティは慌てて空いた手を取る。
無意識か、セシルは握り返し、何とか呼吸を整えようと深く息を吸う。
《ルーティ、動かさないで、背中撫でてあげて》
「え、ええ」
アトワイトの指示に従い背を撫でていると、マリーが水が入ったグラスを持ち戻って来た。
ある程度呼吸が落ち着いた所で、セシルは起き上がる。
「う……」
「水、飲めるか?」
「ん……、うん……」
グラスを受け取り、冷えた水をゆっくり口に含む。