「……クレメンテの鞘、装飾して正解だったなァ」
「斬れないとはいえ、あのナリで大剣下げてるなんておかしいしねェ。マリー様々だわ」
「有り合わせじゃなくて、ちゃんとした材料があったら、もっと可愛く出来たのに……」
「いや、アレで充分よ」
残念そうなマリーを宥めるルーティに、セシルは同意する。
フィリアの姿が見えなくなった所で、彼等は宿に移動した。
「何か、リオンとセシル、ギクシャクしてるなァ……」
《コレばかりは当人達の問題だ、周りはどうする事も出来んよ》
到着した宿の主人は、特に警戒心を見せず指定通り皆を男女別々の部屋に案内した。
地下にある部屋は涼しく、熱射が降り注ぐカルバレイスの人間の知恵なのだろう。
「んー、快適だわ、地上とは大違いね」
「地震でも来て崩れたら笑えないけどね」
「アンタ、サラッとおっかない事言わないでよ……」
少々狭くテーブル等が無く、布団も床にマットを敷いただけの簡易なモノではあるが、暑さを回避出来るならば安い。
マリーに限っては既に眠っていた。