10

 最後の剣を持つスタンは、4本の剣が刺さる神の眼の前で呟く。


「ディムロス……俺……」

《いいのだよスタン、我等は長く生き過ぎた》


 彼は優しく話した。


《本来ならば千年前にこの時を迎えなければならなかった。だが我々の力が及ばぬばかりに、悲劇は繰り返された。彼女の事も、認知出来ていれば救えたかもしれんしな……》


 揺れは続いている。


《だが皮肉だな、我はお前と過ごした時に“幸せ”を感じてしまった。コレは悲劇が起きたが故の感情……軍人としてあるまじきモノだ》

「確かにそうかもしれない……でもきっと、人間ってそういうモノだと思う。幸せの価値を知っていれば尚更、そう思えるんじゃないかな」

《……なるほど……お前に覚らされるとは、我も未熟だな》


 その言葉には清々しさが感じられた。


「それに、多分彼女も幸せだったと思う。現実は哀しいモノだけど、俺が知ってる彼女は幸せそうに見えた……きっと大事な人と一緒だったから」


 強く彼は断言する。


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bkm

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