ゆっくりと柄を握る手に力が込められる。
「さらばだ、イクティノス」
《ファンダリアに栄光あれ……我がマスター・ウッドロウに、幸あれ》
真っ直ぐそれは突き立てられた。
輝くそれの前に立ったリオンは溜息を吐く。
《坊っちゃん……もしかして、気付いていました?》
「お前は本当に、軍人に向いていないな」
《うう……最後の最後まで僕は……》
最後の最後まで彼は落ち込む。
《ハァ……でも、もう坊っちゃんの小言や命令を聞かずに済むからいいのかな》
「僕も、お前のネガティブな発言を聞かずに済むと思うと清々する」
再び溜息を吐き、神の眼を見上げた。
《坊っちゃんは、幸せにならなきゃ駄目ですよ》
「……努力はする」
《あー……でも坊っちゃん無理するタイプだからなァ……心配ですよ》
「無駄な気苦労だな、最後までお前は馬鹿者だ」
柄を握る手は震えている。
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bkm
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