リオン等と行動を共にしていた時とは全く違う、冷たい口調。
そして全く真意の見えない、情の無い眼。
「一応弱点となる部分は把握しているが……仮に自害でもされたら、余計に面倒な事になるだろうな」
「君の言う事なら聞きそうだが」
バルックはリオンの真意を知っている。知っているが故の言葉。
しかし彼女は、笑い捨てた。
「ハッ、馬鹿馬鹿しい……あんな子供にこれ以上労力を使うなんて私はゴメンだ」
「では、全ての準備が整ったら……」
「当然、彼もソーディアンマスター……我等の駒に成り得ないなら、煩わしい障害に過ぎんからな。
失う戦略はたった一本のソーディアン、問題はあるまい」
何故自分より遥かに若い彼女が此処まで非道になれるのかが、彼には理解出来ない。
彼も自身が非道の道を歩んでいると自覚しているが、それを忘れさせる程に目の前の女は冷たい。
理解出来るとしたら、それを成し得るに相応しい“力”を彼女が持っている事だけ。
「そう……彼は、彼等は、我等の悲願を成就する為の役者……全ては運命なんだよ……」
だとしたら、何と哀しい運命か。
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bkm
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