「うっ……ぅ……」
倒れた彼女がふらつきながら上半身を起こす。ソーディアンによる攻撃を受けたからなのか、呼吸を乱し胸を押さえていた。
その姿を見てリオンはシャルティエを杖にして無意識に立ち上がり彼女に駆け寄る。
「セシル!!」
呼んだのは彼ではない。
呼んだのはスタン。
「……え……」
再び見開かれた赤い眼。
その胸を、背中から黒槍が貫いている。
少年の目の前で、その槍は確かに彼女の身体を貫いていた。
「……セシル!?」
叫び、リオンは槍が消え倒れた身体を抱き起こす。
胸に赤が広がり、赤の瞳は赤に濡れ笑う男を見た。
「テクー、トリ……貴様ァ……!」
彼女ではない様な憎悪を孕んだ言葉。
悪意しかない笑みを浮かべるミクトランの手には、神の眼と同じ輝きを放っている結晶があった。
《セシルのコアクリスタルか……!》
それつまり、神の眼。
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bkm
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