「それは勝者側の物言いだな。敗者からすれば、自分達を過酷な辺境の地に押し込めた勝者達は憎しみの対象でしかない。
 逆に、憎んで、何時か来るかもしれない復讐の時を夢見ているぐらいしないと、この過酷な地では生きていけないのだろう。長い時が築き上げたしがらみは大きく、他国も近づかない故に物資の輸出入も満足にいかないからね」

「そんな……」


 フィリアが視線を落とす。人々の幸せを第一に考える神官としては、彼の話は誰よりも重く、哀しいモノなのだろう。


「だから私は、この過去に縛られた閉鎖的な地を豊かにする為に基金を設立したんだ。同じ人間なのだから、何時かは分かり合い、手を取り合う事が出来ると信じてね」

「バルックさんは、優しい人なんですね」


 スタンの言葉に、バルックは首を横に振る。


「私は優しい人間などではないさ……、現にどんなに綺麗事を並べても現状は殆ど変わらない。人々の協力を得る事も出来ず、偽善者だと罵られる事だってある」


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bkm

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