作業員達が飛行竜を降りた後、フィリアが操縦席の傍に立った。
「いよいよですね……皆さん、準備は……いいに決まっていますね」
思わず彼女が笑うとスタンは大きく頷いた。
「ミクトランの野望を止める、絶対に!」
《肩に力を入れ過ぎだ馬鹿者、足下を掬われるぞ》
「わ、分かってるって」
相変わらずの師弟関係に溜息を吐きリオンが指示する。
「フィリア、飛ばしてくれ」
「はい」
笑顔で頷きフィリアは飛行竜を発進させた。
少々の揺れの後離陸した飛行竜は、高度を徐々に上げながら唯一この世界を照らす光へと翼を羽ばたかせる。その姿を皆見上げているのだろう。
《深呼吸でもしたらどうだ》
「ん、……ふー……あー……よし、イケるぞっ」
「単純ね……」
《小難しいよりはいいんじゃないかしら》
光に近づくにつれ飛行竜は頭部を空へ向ける。
「皆さん何かに掴まってください! 一気に上昇します!」
《少し苦しいかもしれんが我慢じゃ》
「なに、今までと、そしてこれからを考えれば大した事は無い」
《確かにな、少しGが掛かるくらい何てことはないか》
急激な上昇による身体が重くなるが、ウッドロウとイクティノスの言う通り大した事は無い。
光の中を進む竜は、創られた大地と奪われた空を目指す。
《坊っちゃん、船酔いなんかしてないですよね?》
「此処で、折られたいのか」
《大丈夫な様で安心です》
今度こそと、その想いを抱く。
「負けられるものか……!」
彼女が好きだと言った空を取り戻す。
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