「あ……」
ルーティは項垂れ、声を絞り出す。
「暑過ぎるわよ……!」
「気持ちいいなぁー!」
火山と砂漠の国カルバレイス。
常夏どころの話ではないその国の港で、スタンは満面の笑顔だった。
「……アンタ、何言っちゃってんの?」
「え? だって暑くて気持ちいいじゃないか」
「唯一鎧を着た君に言われると、自分が情けなく思ってしまうよ……」
未だ船を降りて時間は経っていないが、ルーティもセシルもフィリアもじんわりと汗をかいている。それは、無表情のリオンも同じだった。
「マリーも、平気そうね……」
「ああ、此処の気候は私に合っているようだ」
《彼女は、気候の変化に強いのかもしれないわね。ファンダリアでも平気だったし》
汗一つかかず、スタンと同様に笑顔のマリー。
ルーティは控え目に質問した。
「何か、思い出せる事ってある?」
「うむ……残念だが、今の所は無いな」
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bkm
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