36

 人それぞれ、疑問はそれで解消される。だがリオンは、納得が出来なかった。


「なら、お前自身が必要とする人間は居るのか」

「……私が……」


 無意識に出た質問に、彼女の眼は一瞬揺れる。


「さあ……分かりません……他人の手を煩わせたくはありませんから」


 何故納得出来ないのかは彼自身にも分からない。


「それじゃあ……まるで奴隷みたいだろう……」

「奴隷……悪く、ないんじゃないですか」


 何故そんな事を笑って言えるのか。


「奴隷である間は、自分の居場所が間違いなくあります……充分でしょう」


 なら今の彼女の居場所は、


「それと比べたら私は更に幸せですよ……温かい食事が貰えて、優しい人が居て……コレを奴隷と言ったら……」

「止めろ!」


 少年の叫びに彼女は眼を丸くしている。

 少年は己の中に募る苛々に困惑していた。


「……すまない、いきなり大声を出して」

「いえ……、……くだらない話をして、すみませんでした」


prev next

bkm

[back]

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -