彼女は間違いなく“敵”、ならば抱く罪悪感は己が甘い証拠なのか。だが今の彼にそれを冷静に考える余裕は無かった。
その日の夜、自室でシャルティエの励ましにならない励ましを聞きながらただベッドに横になっているとドアが控え目にノックされた。
『リオン様、お食事をお持ちしました』
「ん……ああ……」
起き上がり力無く答えるとマリアンが中に入り、テーブルに温かい食事を置く。そしてすぐには退室せずリオンに伝えた。
「セシルはちゃんと食事を取ったわ、すぐに良くなると思う」
「うん……」
「……自分のせいだと思ってるのね」
「思うも何も……事実だろう、ずっと僕に付いていたんだから……」
敵が暫く動けなくなったのだ、喜ぶべきであるのに心はすっかり罪悪感に埋もれていた。それが情けないと思う事が情けなくて、彼はそれ以上考える事を放棄している。
「エミリオ……無理して貴方まで倒れるなんてことは駄目よ……?」
「分かってるよ……マリアン……」
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bkm
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