「……この僕が……」
油断なんてするわけがない。
だが、
「負けた……?」
まだ剣を握っていた感触は残っている、それが敗北の証。
目の前の青年の力が、上回った証なのだ。
「……勝っ、た……」
腰を落とすスタンは大きく息を吐き笑っている。
リオンは溜息を吐き、同じ様に腰を降ろした。
「まさか僕がお前に負けるとは……天変地異の前触れか?」
「へへっ、今天変地異が起こるっていうなら、あの外郭も無くなってるだろうな」
「調子に乗るな。……で、何故僕と模擬戦を? 単に実力を知りたいからじゃないだろう」
理由を問うと、彼は外郭を見上げ微笑を浮かべつつ答える。
「ほら、ハーメンツで最初に会った時俺負けただろ? あれさ、ずっ……と悔しくてさ。今の俺の実力を試すついでに、リオンに勝ちたいっ思って」
「……確かに、あの時のお前は酷かったな。力任せの剣術で、正に僕の足元にも及ばない雑魚だった。コレがソーディアンマスターかとさえ思った事もある」
prev next
bkm
[back]