※「ダーリンは情報屋さん」の番外編です

 ソファーに座って何かの資料を読んでいる臨也くんの隣に座ってみた。臨也くんは集中しているのか私に視線もくれなかった。お仕事の邪魔をするのは嫌だけれど、どうしても構って欲しかった私は臨也くんの無防備な膝に頭を乗せる。すると臨也くんは「どうしたの?」と笑って私の頭を優しく撫でるのだった。

「ううん、お仕事の邪魔はしないからしばらくこのままでいい?」
「もちろん」

 臨也くんはそう言うと、私をゆっくり撫でながらまた書類に目をやった。下から見上げる臨也くんもかっこいいなぁ、綺麗な顔なのに喉仏は男らしくて、撫でてくれる手も大きくて骨っぽい。頭を乗せてる足だって余分な肉がついてなくて寝心地がいいとは言い切れないけれど、やっぱり、彼に触れるのは落ち着くなぁと目を瞑る。

 しばらくすると、眠りから少し引っ張られて「波江さん、これお願い」という臨也くんの声が聞こえた。いつの間にか寝ていて、うっすら目を開けるけれどどれくらい経ったかは分からない。

「それくらい自分でしたらどう?」
「残念ながら今俺の膝の上で可愛いナマエが可愛い寝顔で寝てるんだよね」
「そう」

 ため息とともに不機嫌そうな波江さんが言い、乱暴に書類を奪う音が聞こえた。波江さん、ごめん、とは思ったけれど体は重くて、今度は眠りが私を引っ張っているようだった。

「それから、そこの紙の束も取ってくれない?」
「…」
「そんなに怒らないでよ、不可抗力だよ」
「怒ってないわ、引いてるの」
「ははは、痛くも痒くもない」
「あなたって本当に性格が悪いわね」
「ありがとう」

 いつもの言い合いに何だか目が覚めて、少し笑ってしまった。ついでに身じろぎもしてしまい、その動きに臨也くんが目ざとく「ナマエ?」と声をかけてくる。う、もう寝れないなぁ。
 ゆっくり起き上がって髪の毛を整えながら、恥ずかしいから少し笑って「おはよ」と言うと、臨也くんも「おはよ」と笑ってくれた。

「…ごめんね、結局お仕事の邪魔しちゃって」
「邪魔?どこが?むしろナマエのおかげではかどったよ」
「え、でも…」
「可愛いお嫁さんの寝顔を見て、頑張ろうって思わない旦那さんを選んだの?ナマエは」
「…選んでるわけないじゃん」
「でしょ?」

 臨也くんは満足そうに笑うと、薬指に指輪をつけた方の手で私の手を掴むと、軽くキスをした。寝起きの頭には刺激的すぎて一瞬くらりとしたけれど耐えて、へにゃりと笑う。
 臨也くんが旦那さんで良かったなぁ、幸せだなぁ、これって永遠に続くんだろうなぁ、としみじみ思っていたら「はぁ…」と波江さんの重いため息が聞こえた。

「…ちょっと、波江さん」
「私の身にもなってくれないかしら、そういうことは私のいないところでやって」
「ここは俺たちの愛の巣だよ?」
「そんなところを事務所にするんじゃないわよ」
「そのうち卵だってできるからね」
「い、臨也くんっ!」
「眩暈がするわ…」
「俺頑張るよ」
「恥ずかしいよ…」
「本当に黙って頂戴、バカ夫婦」



20120429
二十万打フリリク@ぺこさん
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