謙也と話していたらナマエが「謙也ー委員会のやつー」とプリントを持ってきた。それから二人は話しまくっているのだが、なんというか、まぁ、仲良しやなぁ。

「あ、課題せなあかんかった」
「見せたろか?」
「いや自分でやるわ。ほなな」
「おー」

 ナマエは俺にも手を振って自分の席に戻って行った。頬杖をついていない方の手を振ると謙也が「今日委員会やから遅うなるわ、部活」と言うから「おん」と返事をする。謙也は機嫌の良さそうな顔でにこにことしていた。

「…なぁ謙也」
「ん?」
「ナマエのこと好きなん?」
「おう、あいつおもろいもんな!」
「…」

 いや、ちゃうくて。
 一点の曇りもない笑顔を見ると自分が野暮なことをしているように思えた。けれど一度流れでナマエに「もう謙也と付き合ったらええやん」と冗談混じりに言ったら「いや、あっちはそんな気ぃないやろ」とけらけらとした笑いと共に返されたことがある。
 はっきりと否定はしていない。つまり、ナマエはもしかしたらお前のこと好きかもしれへんねん、謙也くん。

「ま、とりあえず仲良しでええこっちゃ」
「?」

 笑ってそう言ったら、謙也は顔をきょとんとさせた。アホ面や。

 その日の部活、金ちゃんの「謙也はー!?」という問いに「委員会や、もうそろそろ来るやろ」と答えていたらタイミングよく謙也がやって来た。

「謙也や!」
「おう金ちゃん」
「委員会お疲れさん」
「…白石」
「?」

 金ちゃんには笑って対応したが、俺と目を合わせるなり謙也は情けない顔をした。顔から見るに「いやもうほんま信じられへんことがあってん聞いてほしい聞いてくれ白石、あ、時間があったらでええんやけど」という感じが伝わってきたので、金ちゃんに「金ちゃん、千歳探してきてくれへんか?」と言う。金ちゃんは「おー!」と張り切って走って行った。あ、ユウジにぶつかった。ユウジの怒りはまぁ小春が何とかしてくれるやろ。
 で。

「なんかあったんか?」
「いや…あの…ナマエがな…」
「ナマエ?」

 あ、そうか、同じ委員会やからな。
 謙也は言いにくそうに俺から目を逸らしてぶつぶつと呟いた。喧嘩でもしたんやろか、と見ていたら謙也はため息をつく。何や何や。

「俺アホや…」
「喧嘩でもしたんか?」
「喧嘩っちゅーか…」
「ん」
「ナマエが、告られたんやて」
「誰に」
「三組の、バスケ部言うとったけど名前聞いてへん」

 謙也は苛立ちげに頭をかくと、またため息をついた。そしてラケットを脇ではさんで両手で顔を覆って今度は「あああアホや俺ええええ」と言うから何が何だか分からへん。

「…ナマエがな、どないしよって言うてきてん」
「うん」
「せやから俺、なんや、嫌やなあー思うて」
「…」
「いやナマエがモテることが気に食わんわけやなくて、何や、っちゅーか、俺の方が仲ええし、ナマエと」
「…」
「で、腹立って、言い合いになってもーて」
「…で?」
「いや、分からんのやけど、ほんま、自分でも、よう分からんのやけど」
「?」
「…俺、ナマエんこと好きなんかもしれん…」

 謙也は両手で頬を押さえて、少し顔を赤くして言った。笑ってしまった。気付くの遅すぎっちゅー話や、浪速のスピードスター!真っ赤な顔して「はず!めっちゃはずい!」ってもうそれ恋やっちゅー話や、浪速のスピードスター!

 その夜、ナマエから「謙也と喧嘩してもうた…」というメールが来てまた笑ってしまった。
 さて、君たちのこれからはこの白石蔵ノ介の手の中にあるわけや。君たちは共通の友達にこの白石蔵ノ介であったことをこれから、そう、一緒の墓に入るまで感謝することになるやろな。どや、エクスタシーやろ!


20120529
二十万打フリリク@芹澤さん
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